彼らに影響を受けたバンドは数知れず、2012年ロンドンオリンピックの閉会式でも演奏するほど国民的なグループだ。
変わったバンド名であるが、彼らの作品はよくロックの名盤リストや聞くべきアルバムなどによく顔を出している。
今もなお多くのファンがいるバンドだが、おすすめされたりしていざ聞いてみるとハマれなかった人もいるかもしれない。
ロックオペラの金字塔 "Tommy" (1969) や "Quadrophenia「四重人格」" (1973)はレコード2枚組の大作であったり、アルバム通してストーリーとなっているので、歌詞の内容も理解しないと魅力半減かもしれない。
今回はそんなイマイチ魅力が分からなかった人たちに、動いている彼らのおすすめ動画を紹介したい。
歌詞やストーリーをわからなくても、見てるだけですごい!となるようなものをピックアップしてみた。
まずは1967年にテレビ番組に出演したもの。彼らは代表曲の”My Generation”「マイ・ジェネレーション」("俺の世代"という意味)を演奏する。
(前半はインタビュー部分であり、演奏は2分あたりから)
このどもるような(言葉につまるような)歌い方は、若者がたまった怒りを言いたいがうまく言えないさまを表しているとも言われている。
この演奏の終わりに(映像で4分すぎたあたり)機材を爆破し、ギターも破壊しようとする。
この番組以前にも、彼らはパフォーマンスの一環で楽器をよく破壊していた。
ちなみにこの爆発の影響でギタリストのピート・タウンゼントは聴覚に多少の異常が出たとかいう噂もある・・・。
(字幕をオンにすると、おおよその歌詞が出ます)
2つ目は"A Quick One (While He's Away)"「ア・クイック・ワン」("彼のいない間に、急いだ一回"という意味で、まぁ浮気の話)。
1つの曲の長さが10分近くあり(この映像やライブ版では7分ほど)、今後彼らの代表作となるロックオペラの先駆けとなるような曲。6つのパートから構成されており、通して1つの曲になっている。内容を簡単に説明すると「長い間恋人に会えていない女性にいろいろな男性が言い寄ってくるが、最後には戻ってきた恋人にゆるされる」といった感じ。
この映像は1968年にローリングストーンズの主催したテレビ企画で、いろんなアーティストを呼んで演奏したりするもの。
そんな中ザ・フーも選ばれたが、演奏できる曲や出番に限りがある。そこで彼らは持ち曲のなかで一番長いものを選び演奏する。それがこの曲。
全員すさまじいパフォーマンスをしているが、特にドラマーのキース・ムーンに注目すると楽しめるかもしれない。
彼らのライブパフォーマンスは動きも派手で見てて楽しい。ドラマー、キースの激しいスティックさばき(01:35あたり)、ボーカル、ロジャー・ダルトリーのマイクぐるぐる(04:44あたり)、ギターのピートの象徴的なウインドミル奏法(風車"Windmill"のように腕をぐるぐる回してギターをかき鳴らす)(06:40あたり)、ベーシストのジョン・エントウィッスルは直立不動だが、一番強烈なベース音を鳴らしてる。特にクライマックスである最後のパート "You are forgiven"(あなたはゆるされた)部分の圧巻のパフォーマンス。
ちなみに、ローリング・ストーンズはこのすさまじい演奏に自分たちが目立たなくなるのを恐れて、このテレビ企画は1996年まで公式にリリースされなかった。
最後は、少し時期が変わって1978年のライブ映像。
(これも字幕オンで歌詞が出ます。4K画質で驚くほどきれいに鑑賞可)
特徴的なシンセサイザーのイントロから始まる"Baba O'Riley"「ババ・オライリィ」も彼らの代表曲。
ギターのピートはタンバリンを持って登場。イントロ部分でタンバリンを叩くのだが、かつてこんなかっこよくタンバリンを叩く人がいただろうか。ギターの入り方も派手でかっこいい(01:50あたり)。ロジャーのマイクぐるぐる、ピートのウインドミルで腕ブンブンも見られる。そして相変わらず直立で強烈な音を出すジョン。
ただこの時期のドラムのキースはドラッグやアルコールで健康状態もボロボロだったそうだ。悲しいことにこれが彼の最後のパフォーマンスとなってしまった。この映像は1978年5月のもので、同年9月に彼はオーバードーズ(ドラッグの過剰摂取)でこの世を去ってしまう。
これらの映像は全て彼らのドキュメンタリー”The Kids Are Alright”「キッズ・アー・オールライト」(1979)で見られる。
まだザ・フーを聞いたことのない人も、挑戦したが自分には刺さらなかった人も、これを機にもう一回聞いてみたり、好きになったりするとうれしい。
ドラムのキース、ベースのジョンは亡くなってしまっているが、彼らは解散や休止をはさみながらも2023年現在、まだ現役で活動している。
2019年には新作アルバム"WHO"もリリースしている。